ZFCにおける直積の構成

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ZFCにおける直積の構成

ZFCにおける直積の構成方法をまとめます.

必要な公理

内包公理図式:
\(y\)を自由変数として含まない論理式\(\varphi\)ごとに,

\(\exists y \forall x (x \in y \leftrightarrow x \in z \land \varphi(x)). \)

置換公理図式:
\(B\)を自由変数として含まない論理式\(\varphi\)ごとに,

\(\forall x \in A \exists ! y \varphi(x, y) \rightarrow \exists B \forall x \in A \exists y \in B \varphi(x, y). \)

この他に和集合の公理も使用しますが直積の構成において本質的に重要なのは上の2つの方なので今回はこの2つに注目します.

直積の構成

集合\(S, T\)に対して,

\( \{ \langle s, t \rangle : s \in S, t \in T \}, \)

という集合を構成できることを示す. そして, この集合を\(S, T\)の直積と定める. つまり,

\( S \times T := \{ \langle s, t \rangle : s \in S, t \in T \}. \)

ここで, \(\langle s, t \rangle\) は順序対 \(\{ \{s\}, \{s, t\} \} \)である. 置換公理を2回用いることによって上記の集合を構成できることを確かめる.

1. \( \{s\} \times T の構成\)

\(s \in S\)を任意にとって固定する. 置換公理において\(A = T, \varphi(t, y) = [y = \langle s, t \rangle] \)とすると, 任意の\(t \in T\)に対して\(\langle s, t \rangle \in B\)なる集合\(B\)を得る.

ここで内包公理を\(z = B, \varphi(x) = [\exists t \in T(x = \langle s, t \rangle) ]\)として用いて,

\( \{s\} \times T := \{ \langle s, t \rangle \in B : \varphi(x) \}, \)

と定める.

2. \( S \times T \)の構成

同様にして\( D = \{ \{s\} \times T : s \in S \}\)を構成する.

すなわち, 置換公理において\(A = S, \varphi(s, y) = [ y = \{s\} \times T]\)として, 任意の\(s \in S\)に対して\(\{s\} \times T \in B \)なる集合\(B\)を得る.

ここで, 内包公理を\(z = B, \varphi(x) = [\exists s \in S(x = \{s\} \times T) ]\)として用いて,

\( D = \{ \{s\} \times T : s \in S \}\)

と定める. そして,

\( \bigcup D = \bigcup_{s \in S} \{s\} \times T\),

を\(S \times T\)とすればよい.

さいごに

きっちりやると以外と手間のかかる直積の構成でした. ポイントとしては直積の構成に置換公理が必要だということです(内包公理は色んなところで使うのでクリティカルなのは置換公理の方でした).

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